「SEを壊さない社会へ向けて」という提言

「SEを壊さない社会へ向けて」という提言への感想。

偽装請負の厳罰化・摘発強化 重層的な下請け構造を破壊する最も効率的な方法は,偽装請負を根絶することである.直接指示を出せなければ,5次下請,6次下請を使うことはコミュニケーション・コストが大きくなり過ぎて割に合わないのではないか.偽装請負は今でも最大懲役1年,罰金100万円とそれなりに厳罰だが不十分である.法人罰として業務停止命令を出せるようにすべきである.特に大手SIerなど,個別プロジェクトで全社の業務停止命令を受けたら全く割に合わない.

そのうち、建築業界の施行体制台帳みたいなものの提出が義務付けられるかもね(発注者に対し二次下請けも含めて全て開示する仕組み)。 これは発注者の利益を守る為にも有効なのかも。 ちょっと前にオウム系企業がシステム開発の8次下請けに入っていたことが問題になったが、その頃とは状況はあまり変わっておらず、相変わらず出自不明のものが開発現場に潜り込むことは容易である。

そもそも、真っ当に派遣事業主としてビジネスするのであれば、まだマシなのに。

ところで、なぜ多重下請になってしまうのか? 例えば、発注者(或いは元請)からすれば、社内規定によりある一定以上の経営規模のIT企業にしか発注を出せないという制約が存在していたり。 中抜きはビジネスマナーに反するという風土があったり。 (これをやられると怒る経営者が非常に多いのがSI業界の特徴。発注元に対し「○○に仕事を出すときはウチを通してください」が常套文句)

労働基準法の厳格適用 無茶な残業を認めなければ,そもそもSEが壊れることはないのだ.或いは適正な残業代の支払いを義務づけるだけでも状況は改善する.

同意。 あと第三者機関的な労務管理士の設置を義務付けるとか。

内部告発者所得保障制度の策定 偽装請負にせよ残業超過にせよ,摘発は内部告発に大きく依存する.当座の職を失なったり,摘発者として再就職が難しくなる可能性を考えると,なかなか内部告発には踏み切れないものだ.告発から再就職までの期間の所得を保障すれば,もっと告発は増えるのではないだろうか.

これも同意。 もっと言えばブラック企業の情報を共有できる仕組みが欲しい。 Evilな会社の情報交換はあってもよいのでは

ということであれば、Evilな会社を体験したら、その情報を公開してみんなで共有するのは公益にかなうのではないか、とか言ってみるテスト。 さあ、みんなで酷かった会社にはてなブックマーク!とか何とかww

企業ミシュランって必要だなぁと思う。 ただ、告発や労務面からの企業査定の情報公開って色々と難しい部分が多くて、なかなか実現されていないのが現状だろう。 (思うことは多々あるのでまた書くかも)

元請紹介制度の策定 紹介予定派遣と同様の発想で,下請エンジニアと元請との関係が一定期間を超えて継続している場合は,元請による雇用を義務づける.こうすることで大手SIerが下請エンジニアを雇用の調整弁とすることが難しくなる他,エンジニアのキャリアパスも開ける.下請企業から優秀な人材がいなくなるという反論もあろうが,人材を手放したくなければ仕事単位で請けてローテーションすればいいのであって,業界健全化のためにも口入れピンハネだけしてるような会社は整理すべきだ.

派遣業務の縛り(一定期間を超えると派遣先機関へ雇用が義務付けられる点)がイヤで偽装請負を選択している企業もあるので有効性は低いのではないかと。

デスマーチ減税 プロジェクトの失敗を認めた場合,徹底的な情報開示,例えば破棄したコードのオープンソース化などを条件に開発費用の損金算入を認める.顧客企業としては早めに損切りをした方が得なので,これまでよりも早くプロジェクトの失敗を認めることになる.情報開示を義務づけることで,失敗の共有が図られSIの質も向上する.捨てたコードが晒され,第三者によって分析されるようになれば,SIerもいい加減な失敗が出来なくなるのではないか.昨今リスク管理の強化でSIerによる提案のコモディティ化を呼んだいう指摘もあるが,失敗しても損金算入できるのであれば,税金対策でエッジの効いたプロジェクトも増えるかも知れず,失敗しても教訓を業界全体で共有でき,誰かが骨を拾うかも知れない.

デスマ救済の仕組みはあってもいいのかも。

ちなみに東洋経済の話だけども、問題解決については経済合理性の観点からしか語られていないのだよね。 ちょっとずれているというか、のんびりしている印象があるというか。

1.富士通は不採算案件の損切りをし、失敗プロジェクトの社内研修を行う。 2.NEC見える化を推進し、デスマ化を阻止する。 3.(地方内の人件費格差を利用した)国内オフショアの推進

経済誌だから仕方ないのだろうけど。