『戦争の経済学』読了

『戦争の経済学』読み終わったんで感想。

経済学を駆使してどうのこうのというよりは、経済学入門のネタとして戦争扱ってみました、という感じ。

面白かったのは、「内戦」「テロリズム」「核兵器」の章かな。
ただ、戦争による「破壊」がもたらす損害についてはあまり触れられてないのが気になったのは、やっぱりアメリカの本だからか。

印象に残ったものの一つは、ハワラネットワークというイスラム金融システム。
アルカイダも利用してたのではないか、と言われているものだけど、コミュニティへの信頼だけで成立している。

ある金額を送金したいと思った顧客は、自分の村や都市や国のハワラ仲介業者のところにいって、いつ、どこへ、いくら送りたいかを告げる。ハワラ仲介業者はその金額と少額の手数料を受け取り、その顧客に合言葉を告げる。単純な言葉、短い数字の組み合わせ、コーランの一部など、何でもいい。そしてその仲介業者は送金先のハワラ仲間に連絡して、その合言葉と払い出し金額を告げる。これで送金地のハワラ仲介業者の仕事はおしまいだ。これまで何か取引についてメモを残していたとしても、この時点でもうそれは破棄してかまわない。 さて顧客のほうは、お金を受け取る相手にその合言葉を教える。相手は自分の現地のハワラ仲介業者のところへいって(それがだれかは合言葉に含まれていることが多い)、合言葉を告げて、お金を受け取る。払い出しを終えたら、こちらのハワラ業者もメモや送金記録をすべて破棄する。こうした取引は24時間以内に行われ、帳簿もなく、資金移動の証拠も一切残らない。


一回一回のトランザクションで「モノ」としてのお金の移動は発生しないのだよね、あくまで「情報」だけ。
その「情報」も保存はされない。用が済めば毎回破棄される。
なんか応用できないかな、と思ったり。

あと、PMC(民間軍事会社)の話とか。
PMC自体は国軍に比較し、費用も安くて有能らしいが、従業員に対しての賃金はすこぶる良いとのこと。
これについてだが、

要するに、PMCは経済学者たちが効率賃金と呼んでいるものを使っている。効率賃金は、仕事でもっとがんばってもらうために、均衡賃金以上に設定された賃金のことだ。発想としては簡単だ。会社が均衡市場賃金しか払わなかったら、従業員としてはがんばって働こうなどという気は起きない。仕事がダメでクビになったとしても、どうせ似たような賃金でやとってくれる会社があるはずだからだ。でも会社が均衡市場以上の給料をくれている場合、クビになったらこれだけの給料をくれる会社はもう見つからないだろう。だからがんばって働こうという気になる。さらに効率賃金を支払えば企業はいちばん生産性の高い人物を雇える。
効率賃金は均衡市場賃金よりは高いけれど、それを支払うPMCは、通常の軍人より低コストで業務をこなせる。理由は4つある。まず技能が高くて生産性の高い人は、同じ仕事をずっと短時間でこなしてしまえる。次に、高給取りの軍人は(他の労働者でもそうだが)あまり仕事をやめたりしない。おかげでPMCは新規採用にかける費用を減らせる。第3に、軍人はアメリカ政府から訓練を受けているので、PMCは研修費用をかけなくていい。最後に、PMCはアメリカ政府とちがって、一生その人の面倒を見たりしなくていい。訓練済みの人員を契約期間だけ雇い、終わったら好きにクビにすればいい。